池袋から多摩湖まで - タルキートナでバドワイザーを

姉が学生時代に弾いていたチェロを処分することにして、クロサワバイオリン池袋店に持ち込んだ。

確か18万で買ったと言っていた。当時ですでに中古品だった。62歳の姉が18の時だから、44年前という事になる。当時の私は当然のことながら高校生で、金がないのでレコードは石丸電気の直輸入盤か、ディスクユニオンで中古盤を買うしかなかったのにいきなり18万かよ、と思った記憶がある。今から思えば、持病を抱える姉を気遣う両親の親心だったのだろう。

いくらか、値が付くだろうか。２，３万かな。そうしたらその足でクロサワエレキギター館に行ってみよう。厳しそうな感じだったら、クロサワ割引券でもいい。

クロサワバイオリンでは、キリッとしたお兄さんが対応してくれた。「古いですね」

ずっと家にあり、ケースに入れっぱなしだった。東日本大震災の時に、被災地に送ろうと考えたが、金管楽器を受け付ける団体はあったが、弦楽器はなく、送れなかった。久しぶりにケースから出てきた楽器は、私の目からは結構きれいで、風格があるなと感じた。

「どこでお買い求めだったか、お分かりですか？」と丁寧に聞かれるが、もちろんわからない。お兄さんは、楽器の胴の中を一生懸命覗いてみるが、メーカーなどは分からなかったようだ。

「少しお待ちください」

少し経って、お兄さんが戻ってきた。「せっかく、お持ちいただいたのですが・・」

胴に破損があり、修理が必要だそうだ。修理代の方がかかるというようなことを、小さな声で言いずらそうに言う。そうですか。

燃えるゴミではかわいそうなので、持ってきました。代金は要りませんから引き取っていただけますかと申し上げると、お兄さんは恐縮した感じで「それならば」と言ってくれた。「ケースも置いて行っていいですよね？」「もちろんです！」

出口の自動ドアまで見送られて、店を後にした。エレキギター館には行かなかった。

手ぶらで帰ることになった。エレキギターを抱えて帰るか、売れなかったチェロを抱えて帰るかだったが、後者でなかったのは幸いか。

この場合のオプションとして、家まで走って帰るというのがあった。マップさんは27㎞と言っている。まずますの距離だな。

西口側の公園から走り始めた。なんか、走りがバタバタしていると感じた。これで、30㎞弱、持つかな？

山手通りに出て左折、目白通りの交差点に出て、ここは右折で新青梅街道だ。以前、会社からの帰宅時によく使ったルートだ。

文化放送など聞きながらゆっくり走る。哲学堂公園でトイレに寄り、環七通り、環八通りをまたいで進み、仙川通りとの分岐まで来た。直進で新青梅街道を行った方が近いが、関町のアルペンに寄ろうと思い左へ。ヤフオクで買ったK2のブーツを熱形成してくれた昭島アルペンの店員さんが、「バックカントリーされるなら、ぜひ当社のアルペンマウンテンにお越しください」と言っていたからだ。シーズンを迎えるにあたり、新しいワックスを買っておこう。他にもいろいろ、楽しいものが置いてあるかもしれない。

青梅街道に出て、少し行くとアルペンマウンテンに到着。しかし何と、アルペンマウンテンにはスキーのものは一切置いていないのであった。アルペンのくせに。

スゴスゴと退散し、再び青梅街道を西に走る。だいぶ足がきつくなってきた。まだ20㎞まで行っていないと思うのだが。

エネルギーも切れてきた。ここは補給だ。ファミリーマートに寄ってパンを買って補給。再びデベデベと走る。

小平霊園を過ぎ、右に角上魚類がある。この年末年始は角上デビューを果たした。寿司は本当に美味しかった。寄り道して、あのぶ厚いシャケを買って帰ってもいいなと思ったが、奥さんに走ったことがバレるので寄らない。

萩山まで来て、空堀川沿いに、多摩湖自転車道に移動する。ゴールは夕日の多摩湖にしよう。自転車道には8.9㎞の表示の所で合流した。やれやれ、ベンチで小休憩して、仕事関係のメールに返事を打った。有休消化中という事で、一番多かった勤怠管理のメールは、かつて部下だった総務の女子が気を利かせて来ないようにしてくれたが、決済関係はそのままになっている。すべての決済は私が起点なので塞いでしまうわけにはいかない。

再び走り出し、武蔵大和の信号まで来た。あとは700mの上り坂だ。ここで、やや太めのランナーに並ばれた。元気そうな若者で、ハイドレを背負っている。こいつには負けたくないなとひそかに思ったが、信号が変わるとどんどん離された。くそう、俺はこんなに情けなくなっちまったのか。