タルキートナでバドワイザーを

群発頭痛により断酒した山好きオジさんが、定年後にアラスカのデナリを登って、祝杯としてアルコールを解禁することを目指す日記。

富士登山競走2023

4時間21分で完走出来た。本当に嬉しい。

スタート前は、ネガティブなイメージしか湧かなかった。河口湖畔の宿で早く寝たが、出走受付せずにレースに参加するなどという訳の分からない夢など見て、よく寝たのかよくわからない状態で現地に向かった。練習不足だし、来れただけでもいいや、という感情が大きかった。

 

奥さんと参戦するようになってから、前泊するようになった。去年はコロナ中という事もあり、ゼッケンが自宅に送られてきて、現地での受付はなしでスタートだったから、仕事後に自宅を出て、夜に現地入りした。河口湖畔の良い宿だったが、泊っただけだった。今年は前日受付だという。迷惑な話だが、もう引退しているので余裕で休みを取り、お昼過ぎの早い時間に受付を済まし、3時に宿にチェックインした。

泊ったのは「一富士荘」ご飯がおいしく、お風呂も大きく、そして安かった。

一富士荘 - 宿泊予約は【じゃらんnet】 (jalan.net)

口コミ見たら絶賛の嵐だ。そうだろうな。

湖畔を前日に刺激入れで走ると決めていたので、雷雲が近づく中、走りに出た。

宿の前から湖畔に出て右へ。無料駐車場を繋ぐように遊歩道を走ると、河口湖大橋に出た。頂上が雲に隠れた富士山が見える。

河口湖はそれほど大きな湖ではないが、河口湖大橋で東端を切り取ると、1周4㎞ほどのコースになった。ワラーチで走ったが、なんとなく脚が重くなったと感じた。この刺激入れが吉と出るか凶と出るか、なんとも言えなかった。

 

当日、鐘山グランドの駐車場には5時半ごろ着いた。富士山が良く見えた。

バスにはすぐ乗れた。ここから市役所まで大した距離ではないので、時間的余裕があれば歩いても良いのだが、かつて歩いたときに完走できなかった。ここはバスで会場入りしたい。

スタートするまでトイレに2度行った。スタート20分前に、大の方のトイレに入れたから、出すもんは出せた。排泄の不安は無くなったが、暑いし、厳しいだろうなと感じていた。宮下選手のエイエイオーが復活し、娘さんがエイエイオーしてくれた。個人的にはご本人の名調子が聞きたかった。

 

DJケチャップ氏の軽妙なMCでスタート。Bブロックスタートだが、私の番号が一番ケツで、実力不相応な位置からのスタートなのは理解していた。あっという間に、周囲はCナンバーのランナーのみとなり、浅間神社に着く頃は、Dナンバーに囲まれていた。それでも、練習の時より1分ほど早く進んできている。

猛暑続きの東日本。暑い日だった。規定のヘルメットに、つば広の帽子を被って出走しているが、浅間神社から先は日陰になるので、それを手に持って走った。その方が頭が冷えてよかった。このヘルメットは、頭頂部にスリットがあり、そこに指を突っ込むと握らなくても手から落ちない。そのスタイルで走っていると指が痛くなった。

中の茶屋が43分。去年並みだ。という事は馬返し1時間10分前後か。練習で、馬返し~五合目を1時間5分で行っているから、ギリギリ五合目関門は突破できるかな?でもその上はどうだろう。2時間10分を過ぎて五合目関門を通過して、頂上まで行けた事はない。しかし、人気ブロガーのハンサムネコさんが、五合目関門を数秒残しで通過し、山頂に29分の後半でゴールしている記事を読んだことがある。不可能ではないはずだ。

馬返しは10分を過ぎて11分となった。過去最遅だ。去年より2分遅い。去年並みに、五合目まで1時間で行ければ、その先まで行ける。給水をして鳥居まで歩く。登山道から走る。走れる!行けるかもしれない。

しかしその先、たびたび渋滞が起きる。去年はスムーズに通れた狭い場所で、選手が滞留している。渋滞箇所を抜けると走る。そしてまた止まる。渋滞の中ゆるゆる歩いていると、ああ、これで間に合わないと、「渋滞がひどかったですね」などと周りの人と慰めあうのだろう、と思ったりした。足元だけを見て、前が動けば反応して先を急いだ。抜かせるところでは、積極的に前に出た。

ほぼ時計を見る余裕もなかったが、3合目見晴茶屋で時計を見るとまだ関門時間まで35分あった。あきらめるわけにはいかない。

しかし、たびたびのストップアンドゴーで、足に負担が来ていた。時々攣りそうになる。誤魔化しながら進むが、4合目を過ぎたところで左の足裏が激しく痙攣し、まったく動かせなくなった。急いでポーチを探り、「No Clamp」を取り出して飲んだ。効くのか。

効いたのかどうかは別として、少し脚が動かせたので、選手の列に加わる。タイムロスは1~2分か。再び攣らないよう慎重に進む。御座石まで来た。ここから調子のいい時で15分だ。まだ20分あるがどうだろう。比較的若いナンバーを付けた選手が、「間に合わないな」と言い出した。「いやまだ行ける!」と、彼と自分を鼓舞して進む。最初の車道に出るところであと8分。最後の車道で「あと3分!」という応援を聞きながら歩いて進んだ。1時間13分で五合目関門を通過した。

脚の攣りは収まったわけではない。ポーチからベスパハイパーと、芍薬甘草湯を引っ張り出して飲み、給水所の水で流し込んだ。その間に五合目関門は閉鎖された。

さて、ここまですべてのセクションで、過去最遅のペースで来ている。普通に考えればもう山頂は無理だが、行けるところまで行こう。まずは7合目花小屋だ。

花小屋までは、通常ペースで40分だ。時間が押していて、通常ペースでは間に合わないから、35分で行きたい。9時50分に着ければ望みはある。

6合目から、つづら折り23回で花小屋の岩場のはず。今年から、このつづらを数えて気を紛らわしている。下を向いて、足元だけ見て、つづらを数えながら進む。足元しか見ていないが、他の選手より速く動けているのがわかる。どんどん選手を躱しながら、つづら21回まで来た。23回と記憶しているのに、今年の練習では21回で花小屋の岩場に出た。2回来て、2回とも21つづらだったが、本番ではしっかり23回目に岩場が出てきた。花小屋の前で時計を見ると9時51分。行けるじゃん。

今年は、各小屋間の所要時間を把握していない。とにかく先を急いだ。7合目周辺は岩場が続くが、常に前に人のいないラインを選び、手足を使ってよじ登り、前の選手を抜いた。5合目を出てから、誰にも抜かされていない。神がかり的前進だ。

鳥居館、東洋館を過ぎ、8合目太子館まで来た。前述のハンサムネコさんの記事で、太子館が5合目からの中間点だという記載があったはずだ。時計を見ると10時17分。1時間2分でここまで来た。てことは、あと1時間ちょっとで山頂まで行けるのか?

がぜん勇気?が出て、弱気な気分が吹っ飛んだ。白雲荘で10時半。関門まで15分じゃなかったっけ?

その先は砂礫の九十九折り。ここのコーナー数も数えておけばよかった。来年は最初の練習で数えておこう。右へ、左へつづらを繰り返す。周りのランナーは、いつの間にかBゼッケンばっかりだ。みんな、山頂常連組だよね、行けるんだよね?

つづらの傾斜がきつくなり、上を見るとアラモ砦だ。あそこか?似てるけど、どうだ?

階段を上がり小屋前の広場に出ると、標高3350mの表示がある。ここだ!

8合目関門通過は10時45分。行けるぞ。ウソだろ?五合目まで、あんなにボロボロだったのに。

もう半ベソである。

ここから頂上まで、標準は35分だが、一番かかった時は43分くらいだった。気を抜いてはいけない。「余裕ですかね」という人に、「いや、余裕はない」と返事して先を進む。そう、余裕はない。

体力的にも余裕はなかった。そこからは他の選手とほぼ同ペースで進んだ。9合目の鳥居を過ぎると、さすがに安心してペースが落ちたかもしれない。何人かに抜かされながら最終コーナーを曲がって鳥居をくぐる。そしてマットを踏む。やった。

 

4時間21分

 

今年も、良い夏になりました。