タルキートナでバドワイザーを

群発頭痛により断酒した山好きオジさんが、定年後にアラスカのデナリを登って、祝杯としてアルコールを解禁することを目指す日記。

富士登山競走2024

4時間21分で完走できた。去年と同タイム。ここ3年、ほぼ同じパターンとなっている。

5合目をギリで通過し、そこから挽回して10分前に山頂という、ある意味で自分の必勝パターンを身に着けたと言えるが、かなりヒヤヒヤもんの必勝パターンで、出来れば次回からはこれを抜け出したい。

 

網元旅館を5時過ぎに出て、今年は駐車場が下吉田第二小学校なので近い。道中、富士山が右側によく見えた。助手席の奥さんに宮本浩次の「ハレルヤ」をかけてくれとお願いした。

「行こうぜBabyまだ間に合うさ、そんなHot Place」

2年前のこのレースで、8合目以降脳内で自動再生されていたこの曲。Hot Placeが右側に高くそびえている。もうすっかりオトナになった俺にも、夢じゃないけど目指す場所がある。「ハレルヤ」1曲で駐車場に到着。会場行きのバスは待機していて、すぐに市役所に向かった。

朝、網元旅館を出るとき、何となく今日はイケてる気がした。このレース、自信を持ってスタートラインに立ったことはないので、そんな気分は初めてだった。ただ、会場に早くに入ったので時間がありすぎた。時間を持て余していると、だんだん自信がなくなっていくのを感じた。暑そうだな。

30分前にトイレを済ませて車道に出た。今年はスタートCブロック。長年守ってきたBブロックから陥落した。まあ、Bブロックから出ても、周りに全くついて行けないのでその方が良い。偉いサンの挨拶が終わり、上田瑠偉君の選手宣誓があって、お約束の宮下選手の登場。お子さんらは皆さん勝手に引退したとかで、今日はおひとりで登壇した。私としては、ご本人の名調子が久しぶりに聞けて嬉しかった。

DJケチャップ氏の、軽妙な煽りで、いつの間にかスタート10秒前。カウントダウンする間もなく号砲が鳴った。

Cブロックなのでちょっと詰まる。スタートロスは30秒くらい。周りとほぼ同じペースで走るが、なかなかついて行けない。自分が速いのか、遅いのかわからない。金鳥居は7分台のどこか。秒まで確認できなかった。

浅間神社エイドが16分半、イケてる。公園が21分後半、まだまだ。交差点が26分台、どうだ?中の茶屋が42分。エイドロス1分で馬返しへの道に入った。

大丈夫、まだ脚は軽い。中の茶屋までは抜かれるばかりだったが、ここから少しづつ前に出た。大石茶屋が58分!馬返しに1時間8分で行ければ勝ったも同然だ。

しかしそうはならなかった。頑張ったつもりが頑張り切れておらず、馬返し直前の急登にかかった時は9分を過ぎていた。公式な馬返し通過時間は1時間10分。去年、一昨年とほぼ同じタイムだった。

給水して、ベスパ、ジェル、ツーランを飲んで鳥居に向かう。鳥居までは段差の大きい階段が続くので、大概みんな(この時間帯では)歩く。山道から走り出すのが常だが、今年は山道手前から走り出すやつもいる。

歩きながら、練習の時とは違って、全然脚が疲れていないと感じていた。行ける、走れる。

山道に入ってみんな走り出す。去年も、一昨年も、片っ端からぶち抜いて走った記憶がある。しかし、今年は思うように抜けない。俺が遅いのか?いや違う、まだみんな、諦めていないのだ。

去年は1時間11分に馬返しに着いたから、おそらく大半の選手は5合目関門を諦めていたのだと思う。お付き合い程度に走れば、2時間20分の出場資格維持は可能だから、無理しない速度だったのかも知れない。今年はみんな殺気立って5合目関門を目指している。なので、狭いところでは激しく渋滞した。ストップ渋滞が2度ほどあった。それでも2合目まで22分で着いたし、そこからは大きな渋滞はないので、自分としては5合目関門突破は確信していた。御座石が55分。頑張れば2時間10分切れるかと思ったが、この辺りから脚がピクピク言い出し、攣りそうでヤバいので若干ペースが落ちた。5合目は2時間11分。

ここでもベスパ、ジェルと炎熱サプリを給水で流し込んで6合目に向かう。腰に付けたヘルメットを外して帽子に入れて被る。6合目までは周りの流れに乗って進んだが、7合目に至る23つづらからは、ぶち抜きモードに入って前の選手を躱した。しかし、23回の九十九折りを終えて、花小屋前の岩場に取り付くと、いきなり脚が攣り始めた。

足首の角度を変えずに23つづらをやってきて、ここで大きく足首を畳んだのが原因らしい。同時に岩場に取り付いた他のランナーに置いてかれながら、だましだまし花小屋前に出た。9時50分、予定通りで去年より1分速い。

ここに給水があったので、ここでNO Clampを飲んだ。まだ先は長いが、もうピンチだった。岩場は太子館まで続くので、何とか攣りを抑えて進むしかない。

この先の岩場は、去年のような快進撃ではなかった気がするが、徐々に攣りは馴染んできて、岩場も速く登れるようになってきた。鳥居館を過ぎ、東洋館のウッドデッキに出る。ウッドデッキから裏の岩場に出る時、小屋のスタッフか、大会関係者かわからない若者が、「頑張ってください、段差があるので気をつけて」と言ってくれたので、「ありがとう!」と元気に応えて岩場にかかろうとして、見事につまづいた。振り返ったが、どこに段差があったのかわからない。このつまづきで、再び足攣りと戦う羽目になった。

だましだまし岩場を進むと太子館に出た。10時20分、5合目から1時間5分。気持ち悪いくらい作戦どおりだ。

足攣りの余波で、ペースが落ちたかもしれない。この先、鳳来館から15つづらで白雲荘、3つづらで元祖室、そこから9つづらで8合目関門だ。下を見て、つづらを数えながらひたすら歩く。8合目関門の予定通過時刻は10時45分。そこから45分あれば、間違いなく完走できる。

しかし、45分では着かなかった。50分になったら厳しいなと思っていたら、10時48分という微妙な時刻に、8合目関門を突破した。残り42分。以前、43分かかった事があると記憶している。最後まで、安心させてもらえない。

9合目への道に出た。砂礫の九十九折りで、最近では得意としている分野だ。ここから1.3㎞。8合5尺、9合目、山頂までと3セクションに区切られる。下を見ながらひたすら歩くと、8合5尺まで200mの表示。8合5尺で時計を見るとまだ10時55分。ここから35分あれば大丈夫だ。

ひとまず安心だが、周囲につられて殺気立って進む。9合目の鳥居に抱きつく。だんだん傾斜が急になる。山頂鳥居に向かう最後のコーナーを曲がって、ほぼ力を出し切った。鳥居をくぐり、マットを踏むまでは、フラフラとしか進めない。両手を上げてマットを踏んだ。完走だ。

顔を上げると、六花先生がにっこり笑ってこちらを見ておられた。「おめでとう!」と手を差し出してくれたので、「ありがとうございます」とがっちり握手。よほど、このオッサンの完走が嬉しそうに見えたのだろう。

 

ゴールの比較的近くで感慨に浸っていたので、27分ごろからカウントダウンに参加できた。カンダタの群れが手足を使って9合目の岩場をよじ登ってくる。

「あと3分!行ける行ける」

「あと2分!走れー!後悔するぞ走れー!」

「あと1分!走れ!走れ!走れー!」

で、「おつかれー!、よくやったー」

しかしこれって、かなりの上から目線だよね。たしかに、上からだけど。

 

後は下山道を、ふらふらと走って5合目に向かい、バスで北麓公園へ移動。

奥さんと合流し、唐揚げなど食す。

街でも見かける「いがらし」の唐揚げ、奥さんに1個残すが味濃すぎ

 

良い夏になった。