タルキートナでバドワイザーを

群発頭痛により断酒した山好きオジさんが、定年後にアラスカのデナリを登って、祝杯としてアルコールを解禁することを目指す日記。

東北温泉旅行

東北へ、温泉旅行に行ってきた。なかなか楽しい旅行となった。

 

年度末に伊豆大島に温泉旅行に行ったが、実はあれは前哨戦で、大島への旅行をブッキングするときに、同時に東北行きも手配していた。メインテーマは、奥さんの愛車ジムニーで、珍道中ロードムービー的に行ってくるという事だったが、ジムニー君は特にトラブルもなく、1600㎞あまりを走り切ってくれた。

 

4月22日の未明、3時半ごろ家を出発。4時までに高速に乗れば、早朝割で30%引きになる。それを狙って入間インターから圏央道に乗り、そのまま高速を降りずに青森県の大鰐インターまで走った。

当初予定では、たぶん夕方になってしまうので、そのまま旅館に行って休もうと考えていたが、午後のまあちょうどいい時間に弘前まで来れたので、3日目に予定していた弘前城のサクラを見に行った。


桜はまだほぼ満開で、少し散り始めていたので花筏も見られるという、最高のタイミングだった。報道で、桜まつりが早まったと聞いていて、これは間に合わないかと諦めかけていたので、本当に嬉しかった。

桜をたっぷり堪能して、岩木山麓の温泉宿に向かった。

温泉旅館中野

百沢温泉郷 温泉旅館 中野 (onsen-nakano.com)

 

立派なホームページがあるので、どっしりとした老舗旅館をイメージして行ったが、あまり立派とは言い難い、ちんまりとした普通の旅館だった。安アパートのような廊下を進んで部屋に案内された。部屋は広かったが、何故か窓がすごく小さかった。窓の向こうは隣の家だったらしく、開けても眺望は無いようだった。そのかわり、東側にある廊下は窓が大きく、洗面所からは岩木山が良く見えた。

「温泉旅館」を名乗っているが、お風呂は男女とも内湯が一か所だけ。男女入れ替わりはないが、湯船は同じ形状だったそうだ。ひょうたん型の深い湯船で、小さい丸の方に、75㎜の塩ビ管により温泉が注がれている。けっこうな湯量である。おまけに熱い。

これとは別に、水道のホースが突っ込まれていて、それは蛇口を勝手に開いて水量を調整することが出来た。なんせ湯が熱いので、そのままでは入れず、水道の出力を最大にして、ホースを抱えて入浴した。それでも熱く、あまり長時間は入れなかった。お湯も、旅館の説明書きにあったが保温効果が高く、汗で浴衣をびしょびしょにしたまま布団に入る羽目になった。

翌朝、朝食前にお風呂に行ったが、何故か昨晩ほどは熱くなかった。ただこの日は、これから岩木山に登るのであまり長湯は出来ない。風呂から上がり、美味しい朝食を頂いて岩木山に向かった。

岩木山に向かう県道は、世界最長の桜並木だそうだ。バイカー向けのロードマップを持っていて、それにそう記載があったが、これがちょうど見ごろを迎えていた。ソメイヨシノではなく、オオヤマザクラが植えられていて、ややピンクが濃かった。その中を自衛隊の車両が車列をなして進んでいくところを、追うように登山口の嶽温泉に向かった。現在世界各地で戦争が起きているが、この光景は「平和の行進」のようで良かった。

これは帰り道で撮った写真

近くに自衛隊の駐屯地はあるのだが、この行進は岩木山登山リフトの除雪に行くものだったと後でわかった。隊員さんの活躍ぶりを見ながら岩木山に登り、帰りも桜並木を堪能して宿に戻った。


2泊目は、明るい時間にお風呂に行けた。温泉旅館中野は岩木山神社の向かいにあり、岩木山の真南の麓にあたる。お風呂は、岩木山とは反対側にあり、南向きとなっている。このため、お風呂からは岩木山は見ることはできない。ただし、地形的には、岩木川を挟んで反対側は白神山地である。お風呂から遠くに見える、何の変哲もない山並みが、あのシラガミだと分かれば見る側の気分も変わるだろう。

このお風呂も3回目なので楽しみ方も慣れてきた。露天風呂ではないが、窓を開けて網戸にすれば外の風を感じられる。開けた先は旅館の駐車場で、ツーリングで来ているらしい宿泊客の、野田ナンバーのバイクがすぐそこに停まっている。

お風呂椅子を窓の近くに持って来て、しばらくまったりとする。野焼きか、薪ストーブかわからないが、煤けた香りがどこからともなく漂ってきていい雰囲気だ。

ああ、このまま死んじゃってもいいよな。

そんな気がしてくるほど、幸せなお風呂だった。

宿の説明書きに、「当館は家族経営の小さな宿です。大型旅館のようなサービスは出来ませんが・・・」という記載があった。このあと、大型旅館にも泊まるのだが、今回の旅行ではこの宿が一番良かった。お食事も美味しく、我々は連泊なので、2日目の食事は他の人たちと違うものが出た。1日目も美味しかったが、2日目の方が良かった気がする。

宿を立つ日は、食事前と食後にお風呂に入り、名残惜しく出発した。たぶん、もう来ることはないだろうが、本当にいい宿だった。

旅行3日目、天気はあいにくの曇り空。午後からは雨の予報だ。初日に弘前城に行けてよかった。

前日見た、世界一の桜並木をもう一度見てから、大鰐にある日帰り温泉に向かった。

白馬龍神温泉

白馬龍神温泉 | 株式会社朝日会館 (asahiweb.jp)

 

当初計画では、まず初日にここに寄ってから、岩木山に向かうことになっていたが、初日に弘前城に行ったので、ここは3日目のメニューになった。ホームページの写真の通り、温泉成分が床タイル状に堆積して、奇妙な形状を呈していた。温泉は熱いと聞いていたが、43℃ほどで確かに熱い。露天風呂はないが、明るく広い浴場で開放感があった。湯船は1個で深い。そして、湯船の縁に、温泉成分が堆積した奇妙な物質が張り付いている。

湯船は1個だが、ミストサウナがあった。サウナには入らなかったが、サウナがあるので水風呂がある。熱い湯に入ったら、水風呂で体を冷やすというローテーションが組めた。窓も開けられて、外の風が浴びられる。まあ、平日の昼で、ガラガラだったからかもしれない。いいお風呂だった。

 

今回の旅行では八甲田山にも登るつもりだったので、3泊目はそちらに近い宿を取っていた。八甲田山麓の酸ヶ湯温泉は高いし、たしか3泊目の日程では空いていなかったので、やや近いこの宿を取っていた。

奥入瀬グリーンホテル

奥入瀬グリーンホテル - 宿泊予約は【じゃらんnet】 (jalan.net)

 

十和田湖の先、奥入瀬渓谷の起点あたりにある宿だが、十和田湖の北側の国道がまだ除雪開通しておらず、大きく南側を迂回して宿に行くことになった。約150㎞の道のりである。

宿は晩ご飯のないプランだったので、途中の道の駅(道の駅いかりがさき)でおにぎりなど買って、十和田湖の南端に到達し、反時計回りに3分の一回って、奥入瀬渓谷を下って宿にたどり着いた。

宿はこじんまりしたホテルで、妙に階段が多かった。露天風呂が売りの宿のようだったので、まだ明るいうちにとお風呂に行ってみた。露天風呂は地形を利用して見事に設置されており、湯量も豊富で申し分なかった。雨だったので残念だが、天気が良ければ最高だろう。夜でもきっと満天の星になるはずだ。

24時間入れるお風呂なので、寝る前にも行き。朝も朝食前と出発前に入ってきた。ちなみに朝ご飯は美味しくて量もちゃんとあるが、ご飯のお替りは出来ないようだった。それと、食堂の席が窓際だったのだが、どうも隣の旅館が近年焼失したようで、焼けたままの廃屋が良く見えた。重機が一台あれば片付くような気がするのだが、被害者にはその余裕がないのかもしれない。なお、この廃屋は、露天風呂からもよく見える。

旅行4日目は雨の1日だった。グリーンホテルから八甲田山に移動して、山で汗をかいて酸ヶ湯で流す、という算段だったが、濃霧、強風で時々雨という天気では登山は出来そうになかった。まず酸ヶ湯まで移動してみたが、状況は変わらない。山は翌日行くことにして、日本三大秘湯だという温泉に行ってみた。

谷地温泉

日本三秘湯 谷地温泉【公式サイト】 – 八甲田山中にある開湯400年の歴史を誇る温泉 (yachionsen.com)

山小屋のような作りの建物に、窓のない板張りの浴場がある。湯船は2つで、その場で自噴しているというぬるいお湯と、近くから引いてきているという熱いお湯に分かれている。どちらもそれほど大きい湯船ではない。お風呂の説明書きには、ぬるい方に30分以上入って、それから熱い方に5分くらい入りなさいとあるが、ぬるい方では全くあったまらない。

泊まりで来て時間があるならいいが、日帰り利用では熱い方に入るしかない。お湯はいい感じで、さすが日本三大秘湯だなと感じられた。ゆっくりしたいが、外来入浴は16時まで。1時間ほどあったまって、酸ヶ湯温泉に向かった。

 

酸ヶ湯温泉

国民保養温泉地 酸ヶ湯温泉旅館【公式サイト】 (sukayu.jp)

酸ヶ湯温泉は、奥さんがかねてより行きたかった温泉。じゃらんネットで検索しても空き部屋がなく、今回も諦めていたが、酸ヶ湯温泉の公式サイトで見たら空き部屋があり、泊まれることになった。ヒバ千人風呂が有名で、このお風呂の写真は見たことがあった。写真から想像していたのは、山間のひなびた温泉宿だったが、実際の酸ヶ湯温泉は立派なホテルだった。

広大なロビーには団体さんが次から次へとやってきて、番頭さんたちがそれらをテキパキとさばいている。広いお土産屋と、スキーツアーのカウンターもある。駐車場に置かれたコンテナハウスは、スキー格納庫のようだ。

宿は大きく、「湯治棟」といわれるものが2号館、3号館、5号館、6号館とあり、「旅館棟」が2棟ある。なるほどこれだけ部屋数があれば、千人風呂がないと捌けないのだろうと思ったが、千人風呂はいつ行ってもガラガラだった。宣伝用の写真では、老若男女がイモ洗い状態で写っているが「あんな事はありません」と旅館の説明書きにも書いてあった。平日だが部屋は満室で、休日でもこの状態は変わらないのだろう。

千人風呂は「熱い湯」「四部六部の湯」の二つの湯船があり、「冷たい湯」と書かれたかけ湯があった。「熱い湯」より「四部六部の湯」の方が温度が高いようだった。どちらも湯船は深く、たっぷりとあったまれる。

混浴なので、スケベな男性による被害が、いろいろとネットでは記事になっているようだったが、それぞれの湯船中央あたりに看板があり、男性エリアと女性エリアが分けられている。1日に2回女性時間が設定されていて、大半の女性はその時間に来るようで、女性の姿を見ることはなかった。他に、男女別の浴室「玉の湯」もある。

これはいい温泉である。有名なのはさすがに理由があるのだな。ただしお値段が高い。予約したプランは2食付きで2万円近くする。自炊が出来る湯治施設があるのだから、もっと安い料金で泊まれたらいいのにと思うが、この料金で泊まる価値を万人が認めているのだから、商売が成立するのだろう。

晩ご飯も美味しかった。初日の「温泉旅館中野」と違い、おそらく毎日食事メニューが変わるので、隣のテーブルともほぼ同じものが並んでいた。ただし、料金によってか若干メニューが変わるらしく、近くのご夫婦は、長いフォークでカニをほじっていたようだった。

1日6000円のスキーツアーもある。去年までは5000円だったようだ。スキーはシール付きで3000円で借りられる。ブーツは持ってこないとダメなようだが、整備された板とシールが借りられるなら、3000円出してもいいような気がする。連泊して、このツアーに行っているヤマレコの記事があった。お金はかかるが、絶対楽しいだろう。

何度も風呂に入り、「湯治棟」なのに一流ホテルと遜色のない部屋で寝た。朝食は、6時45分からというので、その前に風呂に行き、朝食会場に行ってみると長蛇の列。テーブルもだいたい塞がっていて、相席での朝食となった。ちょっと落ち着かないし、この後山に登るので、適当に食べた。ゆっくりと湯治なら、ちょっと遅めに来て、のんびりと朝食を楽しめたかもしれない。

もう早朝とは言えない時間の出発だが、ロビーは賑わっていて、これからスキーツアーに向かう人々もいた。駐車場には交通整理の番頭さんが立って、大型バスやスキーツアーのワゴンをさばいていた。みんな楽しそうだ。

八甲田山へは、温泉旅館の裏の、公共駐車場まえから尾根に取り付く。天気は快晴で、前日に無理して行かなくて本当に良かった。スキーツアーのコース看板に沿って進み、山頂を4時間ほどで往復してきた。遠く陸奥湾が望めたが、この日は黄砂が観測されて視界が靄っており、数日前に登った岩木山は、薄いシルエットしか見えなかった。

酸ヶ湯近くのブナ林。木が細く、二次林だという


これで温泉旅行のメニューはほぼ終わりだが、何も青森から、無理してその日に帰ることもなかろうと、ほぼ中間地点に宿を取っておいた。

白石温泉 薬師の湯

【公式】白石温泉 薬師の湯|宮城県白石市 宮城蔵王の観光に最適の宿 (yakushi-yu.com)

酸ヶ湯から所沢まで約700㎞だが、白石市はほぼ中間点にあった。立派なホームページには、素晴らしい大浴場と露天風呂の写真がある。「訳アリ部屋」のプランで値段が安いが、いったいどんな部屋なのだろう。大竹まことゴールデンラジオで、バンバレルーヤのよしこさんが、訳アリ部屋に入れなかった話を聞いたことがある。そんな部屋じゃないといいんだが。

もう夜遅くに宿に着いたが、コンクリートに塗装仕上げの外壁で、病院か古い保養施設のような外観だった。老人ホームが入っていて、運営母体も福祉団体のようだった。部屋は昔の公団団地の一室を彷彿とさせるもので、私も奥さんも団地生まれ団地育ちなので、若干懐かしさを感じたかもしれない。ただ、旅行で非日常性を感じたいのであれば、この生活感たっぷりの部屋では厳しいだろう。

お風呂も、プロの写真家はさすがと思わせる内容で、露天風呂も無理やり作った感は否めなかった。ただし眺めは素晴らしく、この日も天気が悪かったが、晴れていれば満天の星だろう。

着いたのが遅かったので夜は1回だけ入って、団地のような部屋で寝た。朝も朝食前にお風呂に入って、朝食のバイキング会場に向かった。バイキングメニューは豊富で、前日の酸ヶ湯の朝食があわただしかったこともあり、ここの朝食は素晴らしいと感じた。席にも余裕があり、たっぷりのご飯と、コーヒーにデザートまで、ゆっくりと楽しむことが出来た。

お部屋も、お風呂も酸ヶ湯温泉には到底及ばないが、安い料金設定と美味しい朝食で十分満足できた。浴衣もパリパリに洗濯してあって、気持ちよく利用できた。1回のロビーに本棚があって、そこに「ドン・キホーテ」4巻があったので、1巻目だけ借りて部屋で少し読んだ。巻末の作者の略歴だけ読んでも楽しかった。

せっかく白石市に来たので、白石城も見学した。同じ宿に泊まっていた、車いすのお母上を連れたご婦人も来ていて、お城近くの身障者用駐車場をご利用出来ていたのを見て安心したものである。

 

最後の最後まで、楽しい旅行でした。酸ヶ湯は今度連泊で行きたいものだ。