タルキートナでバドワイザーを

群発頭痛により断酒した山好きオジさんが、定年後にアラスカのデナリを登って、祝杯としてアルコールを解禁することを目指す日記。

課題満載の、尾瀬までの道

ヤマテンに入会した。ヤマテンの猪熊代表は、時々予報士MLに登場して、キリマンジェロ大矢と議論を交わしている。それでその存在を知っていた。今週末の天候判断のために入会したようなものだ。

谷川岳の東尾根に行くには、27日の日曜日が絶好のチャンスだと思っていた。しばらく冬型が続いて雪が降り、金曜から晴れだし、土曜日は1日晴れ。この日に、多数のパーティーが入山し、ステップを切ってくれたであろうことは想像に難くない。日曜はドピーカンではないようだが、大荒れにならなければイケる。

もちろん、自らステップを切って登るに越したことはないが、実はこの尾根、大昔ではあるがオールラッセルで登っているし、アラカンになった今、この人気ルートを意地でもラッセルしてやる、という気持ちにはならない。さらに、板背負って登り、下りは滑る気でいるので、出来るだけサクッと登りたいと考えている。

「てんきとくらす」を週明けから見ていて、水曜までBランクだったので悩んでいたら、木曜にAに変わり、東尾根決定となって、ロープとハーネスをリュックに詰め込んでおいた。そうしたら、金曜夜にCランクに転落してしまった。マジ?

楽観的予報で知られる気象協会は、日曜のみなかみは1日晴れると言っている。「てんきとくらす」でも、山はCなのに、みなかみは晴れだ。気象庁は1日曇り、ウエザーニュースは朝から雪。

そこでヤマテンを思い出し、月額330円というので入会した。大荒れだと。

わざわざ赤い四角をつけて、大荒れ情報を出している。

寒冷前線が通過し、冬型になって大荒れ、という予報。しかし、顕著な寒波がいるわけではなく、等圧線の間隔も狭くはない。じつは安全側に予報を出しているだけで、荒れないんじゃないの?と正直そう思った。土曜の晩、もう東尾根は中止と、リュックに着いたままになっているバイルを外す段になって、未練がましくヤマテンサイトを確認したほどだ。

もう悩むのにも疲れて、至仏山シール山行に決めた。植木屋の佐藤さんにもらったシールを改造してから、まだ実戦投入していない。3月頭に予定している槍ヶ岳にむけての練習と、今回のコフラック+トラちゃん+シールの組み合わせが良ければ、このフォーメーションで槍ヶ岳に行くつもりで、その確認も兼ねている。

4時に家を出て、眠気に負けて赤城PAうたた寝。戸倉のゲートには7時ごろ着いた。まず雪かきスコップで除雪して駐車スペースを作った。いつもの駐車スペースは、除雪ショベルの雪捨て場になっていて、その中に停めるのは憚られた。そのわきにスペースを作って駐車し、準備していると山スキーヤーの車が雪捨て場内に停めていった。まあ、考え方は人それそれだし。

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1台分除雪



出発には時間がかかった。もっとスムーズに出られるよう、家で準備しておくべきだ。この山行はこれ以外にも反省点が噴出してくる。まずはゲートを跨いでさあ板装着となって、シールのテールが外れている。ここは前から心配だった。テールは単純なフックがついているだけで、横に引っ張ると外れる。前の板は、板のテールに切り込みが入っていて、そこにフックが引っ掛かるようになっていた。手持ちの電動工具で、板に細工は出来るのだが、前の板もなんとなくその切れ込みに引っ掛かっているだけだったので、そのままでいいかと思っていた。

テールを引っ掛け直して出発。歩き出して数十メートルはスムーズだった。なるほど、馴染むんだなと思ったとたん、今度はトップが外れた、というよりトップの金具が広がって、板の半ばまで入ってしまった。何てこと。これではそもそもの設計に不備がある。さらによく見ると、片側のテールのフックが無くなっている。

少し戻ると落ちていた。リベットが切れたらしい。

スタート直後で良かったというべきか。いずれにせよ、使えないシールだという事が判明した。いろいろ苦労して、ここまでもってきたのに。

帰るか、尾瀬岩倉かな、と戻りかけたが、さすがにそれでは空しいので担いで行くことにした。ひとまず車道だし、シールでも徒歩でも変わるまい。

穏やかに晴れており、ヤマテンは外したなと思っていた。東尾根だったな。そうしてりゃこんな事(板担いで林道を歩く)にはならなかったのに。

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晴れてた

しかし、2時間かけて奈津木橋までくると雪が降りだし、あっというまにマトモな雪になった。東尾根に突っ込んでいたら、第2岩峰上の雪稜あたりか。やばかったな。

前回使った、奈津木沢左岸のショートカットラインにトレースはなかった。林道経由で進み始めると、左上するシール登高のトレースがあった。踏み込んでみるとそれほど潜らない。林道をショートカットするトレースと思ってそれを追うことにした。

高度が上がるにつれ、雪質が変わるのか、トレースを追っても潜るところが増えてきた。シール登高のトレースなので、急斜面ではジグを切るが、そういうところで潜っているとイライラしてきて、トレースを外れて直登ラッセルをする個所が増えてきた。トレースを外すと膝上くらいのラッセルになる。

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吹雪です

天気はだんだん悪くなり、吹雪と言っていいほどの雪になった。カッパの下を着ることにしてリュックを降ろし、GPSで場所を確認すると、鳩待峠には向かわずに、子至仏山手前のピークを目指して直登する尾根にいることが判明した。もう鳩待の高度は越えている。早く気づけよ。

安易にトレースに入り、GPSを見るまで自分の位置が分からないなど岳人の風上にも置けない。自らの野生のカンがかなり鈍った事に驚きと失望の念が強かったが、吹雪の中悩んでいてもしょうがない。とにかく主稜線に出て、去年のようにスノーモービルのトレースがあるかもしれないし、あれば山頂を目指し、なければ鳩待経由で下山すればいい。

それで主稜線を目指したが、稜線まで200~300mというあたりで一層天気が悪くなり、撤退を決めた。奈津木橋から1㎞ほどしか来ていないのにもう2時間以上かかっている。進むより、トレースが見えるうちに戻った方がいい。

ひとまず板を背負ったままツボ足で降りる。先ほどカッパの下を履いた地点まで戻り、スキーを履くことにした。スキーを履き、足首固定具(「ばっくるん」と命名してあった)を着けようとしたが、着かない。

足の裏を通すバンドの長さが短いのだ。去年のGWで針ノ木を下るときに片方が着けられず、直しておいたはずだ。今回は両方ともつかない。おかしいな。

天気も悪いしそんな事に時間はかけられない。ばっくるんは今回も役目を果たせない。

足首の固定がないまま滑る。傾斜はない。雪質はパウダー。

足首が頼りないのでスキーがコントロールできない。無理やり回せば曲がるが、足首をグネりそうで怖い。全然ダメだな、と思ったが、慣れてくるといくらか滑れるようになってきた。無理せず斜滑降で高度を下げ、奈津木沢を渡る橋のところで林道に合流。そこからは林道ボブスレーだが、新雪パウダーになっておりスピードは出なかった。

奈津木橋からはツボ足板背負いで登ってきた時より、滑った下りの方が時間がかかってゲートまで。課題満載の珍道中山行は無事下山となった。

まずシールは一から改良が必要だ。金具をそろえる必要がある。トップの金具とテールの横ズレを防止する手段だ。それとばっくるん。これは、今の形状で改良するなら、足の裏を通すバンドをどうするかだが、素材をジョイフルあたりで調査して、新しく作るのもいいかもしれない。以前導入を試みた、ボード用ビンディングのパーツもまだ残っている。

今の状態では、長い板をコフラックで履くのは無理だ。コントロールできない。F山に何と言われても、短い板を積極的に使用すべきだと思う。今シーズンの目玉に、白沢天狗尾根から扇沢スキーの計画がある。できれば長い板で行きたかったが、ここはクマちゃんを連れていくことにした。

槍ヶ岳はK2とカラスくんの組み合わせで決定だ。敗退グセがつきつつあるので、槍ヶ岳はなんとしてでも登頂したい。槍平泊の可能性も考えて、マットとビビィを持つつもり。会にも2日計画で届をしよう。

 

しかしヤマテンはすごいな。とりあえず5月までは入会しておこう。