タルキートナでバドワイザーを

群発頭痛により断酒した山好きオジさんが、定年後にアラスカのデナリを登って、祝杯としてアルコールを解禁することを目指す日記。

図書館で借りた山の本3冊

図書館で山の本を借りて読んだ。3冊ある。

黒部源流山小屋暮らし | やまとけいこ |本 | 通販 | Amazon

わが山岳会の会員、やまとけいこさんの著作。今も続けているのかわからないが、大和さんは夏は薬師沢小屋にいて、会の活動に参加するのは冬のみの会員だった。本職はイラストレーターだとは聞いていたが、イラストで食うのは大変だろうと思っていたら、山の雑誌にイラスト入りのエッセイなど連載されていて、ああ、才能があるってことはいいことだな、うらやましいなと思っていた。所沢の図書館で、「黒部源流」とタイトルが背表紙にある本を見つけ、手に取ったら大和さんの本だった。

黒部の奥にある、山小屋での生活が生き生きと描かれたいい本である。イラストもさすがにお上手(失礼)で素晴らしい。いっぱい売れるといいですね。俺は借りちゃったけど。

 

山は輝いていた:登る表現者たち十三人の断章 (新潮文庫 か 96-1) | 神長 幹雄 |本 | 通販 | Amazon

これも図書館でたまたま見つけた。13人の山の人のエッセイをまとめた本。正直、興味のない部分は飛ばして読んだ。

花の百名山の有名な、田中澄江さんのエッセイは楽しく、読みやすかった。田淵行雄さんの、単独行について書かれたエッセイは、共感するところが多かった。事故を起こせば避難されるのは目に見えているが、山には一人で行く方が楽しい。自分にとって、2人以上で行く場合の理由は二つ。好きな人と行く場合、ひとりでは登れないルートに行く場合だ。どの程度まで、ひとりで登れるかという問題が常に付きまとう。

この本の後半には、ひとりで八ヶ岳に行って遭難死した中島正宏氏の遺構が出てくる。蒼氷の中島さんは、私が大学山岳部時代、過激な登攀で知られた人だ。どちらかというと丸顔で、風貌が野村義男氏に似ていたので、仲間内では「蒼氷のよっちゃん」と呼んでいた(顔を見知っているだけで本人とは面識がないので呼んでいただけ)。越沢バットレスに行くと、必ずよっちゃんがいたような気がする。アイゼンとハンガロを付けて、ガリガリと登っていた。

よっちゃんが八ヶ岳で死んだと、「岩と雪」に載ったとき、「彼はニーチェに傾倒していた」と書かれていたのを覚えている。今回読んだ遺構にも、そのような記述が散見された。なんにも考えずに、山に突っ込んでいった人かと思っていたがそうでもなかった。随分悩んでいたんだな。山に行く意欲がなくなったり、再び湧き上がってきたりしたようだった。よっちゃんでもそうだったのか。

この本を借りるとき、よっちゃんの文が載っているのを確認したので、ニーチェのあの有名な「ツァラトゥストラはかく語りき」も借りた。まあ予想通りほぼ序文で挫折した。それでも50ページは読んだかな?

 

長谷川恒夫、山野井泰司のエッセイも載っている。長谷川恒夫氏も、越沢バットレスでよく見かけた。当時第一ルートはフリー化されたばかりで、Ⅵ+というRCCグレードが付けられていた。フリークライミングがまだ盛んでなかったころで、トップは絶対落ちてはいけないと信じられていた時代だ。おまけに、越沢バットレスのガイド本には、トップの墜落はロープ切断の恐れがあると書いてあった。私が必ずアブミを使ったⅥ+のワンムーブ。長谷川恒夫がちょうどそのトラバースを始めるところだった。いつものようにノーヘルである。

さあ、どうする?と見守っていると、氏は、むんずとばかりカラビナを掴み、A0で抜けて行った。なんか、ほっとした。

山野井氏のはいろいろメディアでも紹介された山行のものだが、生々しく迫力がある。大変でしたね、と言うしかない。

 

ドキュメント 道迷い遭難 (ヤマケイ文庫) | 羽根田 治 |本 | 通販 | Amazon

2月に図書館がしばらく休館するので、何か借りておこうと文庫の棚を見ていて見つけた。7件の道迷い遭難の事例が紹介されている。どのケースも生還しているので、読後感は悪くない。のっけの、常念岳のケースが大変で衝撃的だった。しっかりした女性登山者が、冷静にルートに復帰するケースを紹介して本書は終わる。

父娘で道に迷ったケースを除き、すべて単独行である。まあ、二人以上いれば、あまり迷うってこともないだろうが、私は、奥さんと2人で行って、迷ったことが2回ある。一人で行って迷った記憶はない。

1回目は、三つ峠の岩でクライミングをした帰り、林道沿いの駐車スペースに戻ろうと歩いていたが、いつの間にか全然見たことのない場所を歩いていた。もう日が暮れて、ヘッドランプを点けて来た道を戻って事なきを得たが、いまだにどこをどう間違えたのは分からない。2回目は秩父沢登りの帰り、登山道が沢を渡るところで道を見失った。夕方で暗く、もう道がよくわからなかったが、お恥ずかしいことに、私はヘッドランプを忘れて来ていた。奥さんが持っていたランプで道を探し、何とか下る事が出来た。奥さんは、そこでビバークすることを主張したが、翌日も仕事だし、それより会の仲間に迷惑をかけたくなかったので、必死に道を探した。

「道迷い遭難」でも、YouTubeの遭難紹介サイトでも、道に迷った人はわりとあっさりビバークすると感じている。私は、山の中で着の身着のままで寝るという事が、どんだけ悲惨か知っているので、行動可能なら動き続けると思う。

とにかく、道に迷ったら、来た道を戻ることだ。これは間違いない。