タルキートナでバドワイザーを

群発頭痛により断酒した山好きオジさんが、定年後にアラスカのデナリを登って、祝杯としてアルコールを解禁することを目指す日記。

実はスキーは好きではない?西黒尾根

奥さんが仕事の土曜日、再び谷川岳に向かった。晩ご飯の支度が出来る時間に帰るのは同じミッションだが、今回はスキーを持って行った。当初計画は芝倉沢滑降。

先週、八ヶ岳の天狗尾根を登って、12時間行動の充実した登山だったのに、実のところあまり楽しくはなかった。おそらく、病み上がりの体力衰退で、天狗尾根後半がやたら苦しかったからだと思う。仕事先から、遠く白い山並みが見えて、ああ早く山に行かないと雪が消えてしまうと思い、谷川岳に行くことにしたが、なんとなく体力は戻っていない気がしていて、西黒尾根がまたしんどかったら嫌だなと考えてしまっていた。

朝、3時前に起き上がった時も、体がだるかった。それでも淡々と支度をして、未明の関越道に走り出た。本庄児玉を過ぎると眠くなり、運転が危なくなってきたので、駒寄PAに入り仮眠。30分寝て、起きあがってトイレに行ったが、あまり眠気は取れていない。この時点で山行中止にして、沼田インターで降りてスキーに行ってもいいんじゃね?と真剣に考えた。いや、ダメだ。行かないと絶対後悔する。

水上インターで降りて土合に向かい、ロープウェイの駐車場に車を入れ、支度をする。ほぼパッキングされているので準備は早い。仮眠によるロスタイムもあったので、歩き出しは6時半となった。もう明るく、ランプは要らない。天気は曇り。晴れの予報だったが、比較的低い雲がどんよりと空を覆っていた。f:id:sandyou:20240219222914j:image

2月とは思えない雪の量で、西黒尾根登山口までは車道を行く。夏道通りの急登に入る。今シーズン初のスキー靴歩行で歩きにくい。今回は、家の近くのリサイクルショップで買ったスキーズボンを実戦投入した。サイズがXLでぶかぶかだが、スキー靴をすっぽり覆ってくれるので、雪が靴に入り込む心配がない。

出だしの、鉄塔までの急登は、歩きにくいのもあってキツかった。まだ、病み上がりが続いているんだなと思った。歩きながら、鉄塔で止めちまっても恥ずかしくないよな、などと考えていた。トレースは鉄塔を通らず、上部の稜線に直接出ていた。その為ではないが、鉄塔敗退はなかった。

ただ、歩みの遅さから、芝倉沢は無いなと思った。芝倉沢にしようと思ったのは、西黒沢の下の方は、滑れる状態ではないと思ったからだ。それに、天神尾根の上部も、ギャラリーが大勢いる中、コケながら降りるのは嫌だった。しかし、今のコンディションを考えると、天神尾根を板を担いで歩いて降りて、スキー場から滑り出すのが順当ではないだろうか。

西黒尾根は、固い雪の尾根になっていた。12月から4月まで、まんべんなく登っている尾根だが、こういう雪の状態は初めてだ。取り付きからアイゼン履いてても邪魔にならない感じ。前回と同じく、ラクダのコブが終わった先の急登でアイゼンを履いた。そのあたりから、いきなりガスが薄くなって青空が広がった。f:id:sandyou:20240219222943j:image

振り返ると雲海だ。f:id:sandyou:20240219223026j:image
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この光景で、いきなり元気になった。絶景の中、頂稜に飛び出し、トマの耳に向かった。まだ天神尾根のロープウェイ登山者は到着していないが、板を担いだ山岳スキーヤーが二人、上がってくるのが見えた。おそらく、田尻尾根か、スキー場の田尻沢コースをハイクアップしてきたのだろう。f:id:sandyou:20240219223049j:image

山頂に着いた。スタートがヘロヘロだったわりに、3時間10分くらいで届いている。足が攣るとか、そういう事象はなかった。天狗尾根の標高差は1000m、西黒尾根は1200mあるので、これは病み上がりから回復したと言っていいのかもしれない。

2人組のスキーヤーが上がってきた。西黒沢に降りる予定なら、後をついて行こうと「どこを降りるんですか」と聞いてみた。マチガ沢四ノ沢との返事。まあ、そうだろうな。こんな気合の入ったスキーヤーが、西黒沢のわけはなかった。f:id:sandyou:20240219223110j:image

「芝倉沢はビビったのでやめます」と正直に伝えると、「下の方は繋がってないかもしれませんからね」と言ってくれた。少し気が楽になった。ありがとう。

歩いて肩の小屋まで降りた。前後して西黒尾根を登ってきたお兄さんが降りて行くのを見送りながら、滑走準備をする。ビーコンをSENDにして、ブーツのバックルを締めて、ストックの長さを120㎝に合わせて・・・

準備しながら、ホントに行くのか?俺?ガリガリ君じゃね?と自問自答した。どう見ても、この俺が快適に滑れる斜面ではない。しかし、今さらやめられない。ほぼ義務感で、そろそろと斜面に出た。

ガリガリと音を立てながら、横滑りで高度を下げる。天神尾根を右に見て、大斜面を斜滑降で降りる。キックターンで方向を変えて斜滑降。これを2,3回繰りかえす。意を決してターン。何とか曲がれるが楽しくはない。

高度を下げると、先ほど見た素晴らしい雲海の高度になる。すると当然視界が悪くなった。ちょうど、天神尾根を跨いで、ヒツゴー沢側に渡る辺り。天神尾根に乗って行く先を確認するが良くわからない。

パラパラと登山者が上がってくる。ここいらで覚悟を決めよう。ガスガスの中、板を担いで降りても恥ずかしい事はない。f:id:sandyou:20240219223139j:image

去年のクリスマスに、奥さんから贈られたスキー用のリュックに板をつけて下る。時おり、すれ違う登山者が、「滑らないんですか」と聞いてくるが、愛想笑いでかわす。熊穴沢のところまで来た。ここで電波が取れるので、山岳会と奥さんに下山ルート変更の連絡を入れる。もう、熊穴沢に入る気も起きない。俺はスキーが好きなのか?f:id:sandyou:20240219223155j:image

大休止後、天神平に向かう。ゲレンデに出ると再び滑走準備。ここからなら、プレッシャーもなく飛び出せる。

ゲレンデを滑ってレストハウスへ。そこでトイレを借りてから田尻沢コースへ。田尻沢コース入り口には、圧雪良好、転落注意と看板があった。狭い九十九折りのコースを滑って駐車場へ。昼に下山したから半日コースだったし、ほとんどスキーは担いでいたが、十分楽しかった。f:id:sandyou:20240219223226j:image
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本当のところ、山スキーにはゲレンデで練習してから来たかった。リフト代の安い平日に来ようと考えているうちに、暖冬で雪がなくなっていくのを見かねて今回、板を担いで西黒尾根となった。練習不足のスキーは全くサマにならなかったし、楽しくもなかった。無理してスキーをしなくてもいいのかもしれない。無理してるつもりはないんだけど。

昼に下山連絡をして、昼休みだった奥さんに晩ご飯のリクエストを聞いたところ、シフォンケーキが食べたいとのこと。かしこまりました。f:id:sandyou:20240220064259j:image
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帰り道は思いの外時間がかかって帰宅は17時になったが、なんとかミッション完了した。急いだわりに、今日のケーキはなかなかの出来だった。