タルキートナでバドワイザーを

群発頭痛により断酒した山好きオジさんが、定年後にアラスカのデナリを登って、祝杯としてアルコールを解禁することを目指す日記。

乗鞍岳デビュー

4月4日は秘密基地のある部落の掃除。町内会、ではない。ここは行政区としては小川町の所で「町」が出てきてしまう。小川町の竹沢地区、その下の「区」で集まっての道路掃除は年3回ある。春の清掃のあとは午後から区民総会が行われるのが通例だが、コロナ禍で去年に引き続き中止となった。あと2回は7月と10月。10月はハセツネと必ず重なるので欠席させていただいている。

掃除の他に、冬タイヤ~夏タイヤの交換、椎茸のコマ打ちとメニューが満載だ。先日奥さんを久しぶりに当地にご招待して、いろいろ言われたがまだ売却とはならなかったので、しばらくは秘密基地ライフが楽しめそうだ。

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ガスは来ないけど

土曜日は足の痛い奥さんに湯治を提案したが却下された。ひとりで行ってらっしゃい、との事だ。脊椎間狭窄症の診断があったので、今週末の山は諦めていて、どこも行き先を考えていなかった。谷川岳とか巻機山とか、行ったことのあるとこはイマイチだ。かといって、どこか勝負をかけるような山に行くには覚悟が足りない。で、3000mからのダウンヒルだという、乗鞍岳を思いついた。どうもスタート地点のスキー場は、今週いっぱいでクローズらしい。

4時に起床、4時半前には出走した。睡眠3時間半での出発に、エナジードリンクを用意してあった。多少眠くても、諏訪湖SAまでは通しで走ろうと考えていた。かなり眠くなるシーンもあったが、長坂あたりで復活して、松本インターを降りて、道の駅風穴までノンストップで走った。ここからは乗鞍高原スキー場まで35分。8時に駐車場に入れたから、3時間半のドライブだった。やっぱり、遠いな。

乗鞍スキー場の駐車場には十数台の車があり、バックカントリー系の人たちが準備をしている。リフト営業時間までまだ間があるようだ。

乗鞍岳デビュー、といってもスキーでの話。50年前の小学4年生の時、家族旅行で来て、山頂にも行っている。高山病にかかり、嘔吐し、家族に迷惑をかけた記憶が断片的に残っている。

スキーはデビューなので、リフトの場所とか、乗り継ぎ方とか、先輩たちの真似をするのが一番だ。シールをもう貼っている人がいる。真似して貼った。リフトは3本乗るとヤマレコにあったが、リフト券売り場で、一番下のリフトは動かないので、そこは登ってと言われた。シールで登る人はおらず、スキーを担いでツボ足登高している人に続いて、シールを貼ったスキーを担いで歩いた。一つ上のリフト乗り場には先頭から10人目あたりに並んだ。

リフト運転開始は9時との事。板を履いて待っていると、シールを付けたままでのご利用は出来ませんと、係員の人が言ってまわっていた。え?ダメなの。後ろにはもう50人以上の列が出来ている。もうみんなリフトに向かって動き出すタイミングだったので、列から離れるしかなかった。最後尾に回ってシールを剥がす。急ぐ旅でもなし、まあいいや。勉強になった。

リフトを2本乗り継ぎ、ツアーコースの起点に出ると、多くの人が準備している。準備は剥がしたシールを貼り直すだけなので直ぐに出発した。コースは明瞭で、ツアーコース用に森を切り開いてあるようだ。

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ゲレンデ滑る人より多い?

緩やかな登りが続く、ほぼアップダウンのないコース。乗鞍岳はコニーデだから、こういう地形になるのだろう。ただ、出だしにやや急なところがあって、そこはシールで上がるのに苦労した。全コース中で、ここが最大の難所かもしれない。

だんだん樹林が薄くなり、3月に雪崩遭難があった場所に出た。正直なところ、ここが雪崩れるとは想像がつかなかった。合掌して通り過ぎた。氷雪判断は己を過信してはいけない。肝に銘じよう。

出発して一時間ほどで、だだっ広い雪原に出た。位ヶ原に出たらしい。正面にピークが3つ見える。中央が乗鞍岳の剣ヶ峰だが、はじめ見たときは分からなかった。はるか前方に小屋のような物が見える。そちらに向かう登山者と、小屋の先のコルに向かって斜面を登る登山者が、米粒のように見えた。あのコルから、稜線づたいに行くのがルートらしい。そこが一番傾斜が緩そうだ。

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この写真だと右が剣ヶ峰


雪から半分出ている小屋のようなものは、乗鞍スカイラインにあるトイレのようだった。そこから、コルをかすめるように左のピークに向けて高度を上げていく。普通にシールで登れる傾斜だ。雪が締まっているので、トレースを外したほうが滑らず楽だった。やや急な所は電光型に登り、頂上稜線に出ると山頂の鳥居が見えた。稜線は岩が出ているが、間の雪をつないでシールのまま登っていけた。一つコブを超えると顕著なコルで、先行者がシールを剥がして滑走準備をしていた。

板をデポして、せっかく担いできたピッケルを持って山頂に向かう。ここまで、上下ともカッパは着ず、上はインナーで手袋もしていなかったが、上下ともカッパを着て手袋もはめた。靴底はビブラムではない、滑走重視の靴なので歩きにくいが、距離が短いので問題はなかった。白木の鳥居をくぐり、山頂に立った。

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賽銭箱があった筈だが

山頂にはお社があり、50年前の写真ではその前に賽銭箱のような物があり、ある少年が賽銭箱の台の下にしゃがんでいる写真が残っている。それが山頂での記念撮影らしい。彼はその後高山病になり激しく嘔吐するのだが、この写真の時はアドレナリンの効果でカラ元気が出ていたものと想像される。

山頂で風景を堪能して下降にかかる。この靴での下降に不安はあったが、この程度の道なら問題はない。雪があれば踵を食い込ませて歩くだけなので、登りよりかえって楽だ。下から、コルで準備をしていた集団が、ワイワイ言いながら上がってくる。コルは無人となった。滑り出すなら今だ。

シールを剥がし、バックルを固定し、急いで斜面に出る。傾斜は中くらい。雪が良ければ問題なさそう。大雪渓と呼ばれているので開けており、下まで見えている大斜面だ。まずは様子見で斜滑降。一時停止して、キックターンではなく向きを変えてみる。曲がれる。次は反対向きの斜滑降。止まらずにターン。徐々に板を下に向けていき左右にターンを繰り返す。調子に乗りすぎないよう、何ターンかに一度は止まって安全に降りる。急傾斜地はわずかで、もう位ヶ原の雪原に出てしまった。なんか、物足りない。

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滑った斜面を振り返る。確かにたいした傾斜ではない。

調子に乗ってはいけない。安全に降りてこられた事を感謝せねばならない。ここからは緩斜面をゆったりと滑る。快晴なのでルートは明瞭。ガスったりしたら状況は一変するだろう。

位ヶ原から、樹林を開いたツアーコースに入ると、コースは足跡だらけでデコボコだった。快適とはほど遠い滑りでスキー場に戻り、ガラガラのゲレンデを駐車場まで滑って帰還した。

条件が良すぎたのだろう。乗鞍岳は大きめの根子岳という印象だった。3月のもう少し寒い時期に来れば、山頂付近はカリカリでもっと気合が入ったのかもしれない。家から遠く運転が大変だった割に充実感は薄かった。帰宅後、同日の他の方のヤマレコを見ると、リフトを使わず下から歩いている人も多かった。そうすれば、もう少し盛り上がったかも知れない。しかし、駐車場やトイレとスキー場の施設をお借りして、お金を全く落とさないというのはどうかと思う。

下から歩かなかった事より、もっと気合いの入った計画にしなかった事への後悔の方が大きかったが、仲間の報告では、鹿島槍の北壁はグズグズ雪で登れなかったという。これを聞いて少し安心した。

今年はジャガイモを植え損なったが、椎茸のコマも、もう売り切れている店が多かった。帰りの渋滞をこなして八王子インターから拝島橋を渡り、新青梅街道ジョイフル本田に寄ったが、もう今シーズンは終わりと言われた。そんなこともあって、秘密基地近くのコメリに250コマ入りが4箱あると聞いて全部買ってきてしまった。WEBで見たコマ打ちのイラストによると、直径10cmで長さ1mの原木だと100コマ打つようだったし、現場から持ってきた原木は軽トラ1台分あったので、1000コマでちょうどだと思ったのだ。

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これで250コマ分

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全部の原木からこんなに採れたら大変

一箱め250コマを打ち終わって、もう去年分くらいあるじゃん、となったが、買ってしまったので仕方がない。なんとか頑張って500まで打って秘密基地での今週の作業を終えた。次回まで、コマの菌が元気だといいのだが。