タルキートナでバドワイザーを

群発頭痛により断酒した山好きオジさんが、定年後にアラスカのデナリを登って、祝杯としてアルコールを解禁することを目指す日記。

白根三山

高校一年の夏合宿は、広河原から入山し、まずそこで1泊。そこから大樺沢から北岳に登り、塩見岳から三伏峠経由で降りるという南アルプス北部縦走計画だった。しかし、途中台風の直撃を受け、コースを変更して白根三山縦走となり、農鳥小屋のテント場で、当時の家形テントが潰れ、小屋に逃げ込む事態となった。大半のテント泊客が、同様に小屋に逃げ込んでいたと記憶している。小屋の親父さんは怖かった。今も、親父が怖い小屋として知られているようだが、45年前なので先代の人だろう。

夏に、どこか高いところを縦走したい、と奥さんが言いだし、白根三山に行くことにした。農鳥岳側の起点、奈良田野に車を置いて、そこから広河原行きのバスがある。三山縦走して、スムーズに車で帰れる。南アルプスはアプローチの林道が崩壊しやすく、行き方で悩むことが多いが、この方法は定番になっているらしい。

奈良田~広河原のバスは、8月20日までは朝5時台の早朝便がある。これに乗るには、前乗りして車内泊だろうが、なんせ暑いので、標高800mの奈良田でも、車中泊は厳しいのではないかという意見が出て、深夜に所沢を出発することにした。

深夜の中央道は、何故か左右ルートが合流するあたりから渋滞し始めた。なんと、暴走族スタイルのバイクが何十台の規模で走っている。富士山へ行くのか、大月ルートの分岐で滞留し、そこが渋滞の起点になっている。大月ルートはしばらく本線と並走するが、本線側にも爆音が聞こえてきたし、蛇行するバイクが時折見えた。

一部の分隊が、本線側にも漏れ出してきて、タンデムで蛇行してきた。しかし台数が少ないので大人しめの蛇行で、一般車が100㎞で流れているので、その流れに乗ることに集中していたのかほぼ普通に走っていた。甲府昭和あたりで降りる事にしたらしく、出口の分岐に数台が停まって仲間を待っていた。

まだこんな連中いるんだな。カタギを巻き込んでこなくてよかった。

そんなこともあったが、奈良田には3時間ちょっとで着いた。2時間ほど仮眠し、バス乗り場へ。バスは3台待機していて、先頭のバスで広河原に入った。

北岳への定番の登路だった大樺沢は通行止めだった。御池小屋経由で登るのは初めてだ。大汗をかきながら御池小屋まで行き、そこから草滑りの急登を肩の小屋へ。肩の小屋にも初めて来た。朝は良かった天気も、積乱雲が湧き出し、遠くに雷鳴が聞こえてきた。展望がない中、北岳に着いた。

泊まりは北岳山荘。45年前にもここでテントを張った。当時は水洗トイレのある山小屋という事で話題だった。トイレは水洗ではなく、バイオトイレに変わっていた。

夏合宿のあの日、テントを畳んで出発のため小屋前まで行くと、「○○(私の本名)じゃねえか」といきなり言われたので振り向くと、中学の友人ダボ君がいた。彼も山岳部の合宿中だった。ロックつながりで友達になった彼が、山岳部に入ったとは驚きだった。

月日が流れ、会社に、同い年の人が中途採用で入ってきた。業界では多い、農大出身者だった。話していると、山好きで、農大山岳部出身者だった。「あれ?もしかして、高校から農大ですか?そしたらOO君(ダボの本名)っていませんでした?」と尋ねると、「ダボ?!」と聞き返された。高校でも、同じあだ名で通っていたらしかった。

そんなことを思い出した。夕方少し雲が切れ、仙丈ケ岳がちらりと見えた。

翌日、朝のうちは天気が良かった。素晴らしい日の出を見られた。

しかし、だんだんと雲が出てきて、間ノ岳農鳥岳も雲の中だった。

間ノ岳では少し青空があった

農鳥岳は真っ白

農鳥岳の稜線から、大門沢小屋方面に降りる分岐には、立派な鉄骨の道標と鐘があり、それは25歳で遭難死した方の慰霊塔だった。冬にこの分岐がわからなくて遭難されたそうだ。雪で夏道が消えれば、ただの雪の急斜面だろうから、それは難しいだろう。

この稜線は、この先に転付峠があるというのを、今回地図を見て初めて知った。転付峠の名前は知っていて、南アルプス南部では重要な峠だと認識していたが、正確な場所は把握していなかった。こういう、昔気になっていた場所を訪ねる山旅というのもいいな。

大門沢小屋への道は、よく整備されているが、急なので歩きにくかった。結構くたびれてきたころ、目の下に赤い屋根の小屋が見えた。裏側から見ると廃屋に見えたが、表に回るとにぎわっていた。

45年前は農鳥小屋から下山したから、大門沢小屋には泊まらなかった。白根三山縦走でも、ここは泊まらない人も多いようだが、今回は急ぐ旅ではない。小屋の先の、なるべく明るいところにテントを張ってのんびり泊まった。

最終日も朝は天気が良かった。

大門沢小屋がここに建った理由がわかった気がした

楽しそうに下る、韓国チームと前後しながら下山した。総勢16人のパーティーで、奈良田温泉を予約していたらしい。温泉に行くと、ご主人が「予約の、韓国の方が大勢でいらして...」と申し訳なさそうにおっしゃるので、彼らが入浴中に食事を済ませて、時間差で入浴した。露天風呂はなかったが、移築した古い建物を改造したお風呂で、趣があってよかった。

大型バスで帰る韓国チームと、ほぼ同時に奈良田を離れた。日本を楽しんでください。

 

飯能から甲府に移転した、美味しいパン屋さんに立ち寄ってから帰宅。

展望には恵まれなかったが、予定通り、怪我もなく下山出来たのは良かった。

 

良い夏合宿でした。